本教室 宮崎裕大助教 が執筆した、脳卒中患者の各臨床因子の予後予測モデルへの寄与率を比較した研究がscientific reportsに掲載!
投稿日:2023年8月1日
■掲載雑誌 / Journal
scientific reports
■論文タイトル / Title
Comparing the contribution of each clinical indicator in predictive models trained on 980 subacute stroke patients: a retrospective study
■著者 / Authors
Miyazaki Y, Kawakami M*, Kondo K, Tsujikawa M, Honaga K, Suzuki K, Tsuji T(*責任著者)
■内容 / Contents
レビュー論文では多数の論文から予測因子を抽出することはできますが、論文が異なると分析するデータが異なるため、予測モデルに対するそれぞれの予測因子の寄与率を直接比較することは困難でした。 本研究では、東京湾岸リハビリテーション病院のデータベースから、脳卒中患者980症例のFIMの小項目、SIAS、握力や栄養指標などを抽出しました。そのデータを用いて、重回帰分析により脳卒中患者の退院時FIM合計点を予測する予後予測モデルを作りました。そして、予測モデルに対する予後予測因子の寄与率を比較・考察した研究です。その結果、入院時の体幹機能が退院時FIM合計点の予後予測モデルに最も寄与することが明らかになりました。統計学的に十分な症例数を用いることで、一つの研究の中で32種類にものぼる多数の予後予測因子の寄与率を比較したことが、本研究の新規性です。
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Title: Comparing the contribution of each clinical indicator in predictive models trained on 980 subacute stroke patients: a retrospective study
Miyazaki Y, Kawakami M*, Kondo K, Tsujikawa M, Honaga K, Suzuki K, Tsuji T
Scientific Reports volume 13, Article number: 12324 (2023)
https://doi.org/10.1038/s41598-023-39475-x
背景)
脳卒中患者の予後予測に関して多くの先行研究があります。しかし、症例数が十分でないために、一つの研究の中で採用できる予測因子は数個であることが多く、多数の予測因子の予測モデルに対する寄与率を比較することは困難でした。また、レビュー論文では予後予測因子を網羅することはできますが、元研究のデータや予測モデルが異なるため、レビュー論文でも各予測因子の予測モデルへの寄与率を比較することは困難でした。そこで本研究では、脳卒中患者の予後予測モデルを学習する際に、多数の臨床指標を解析するのに十分な症例数を用いることで、それぞれの予測因子の寄与率を比較することを目的としました。
方法)
本研究では、脳卒中患者980名のFunctional Independence Measure(FIM)や麻痺の重症度、健側機能や栄養指標などの32の臨床指標という大規模データを収集しました。このデータを用いて、重回帰分析により退院時のFunctional Independence Measure(FIM)合計点の予測モデルを学習しました。そして、標準偏回帰係数を比較することにより、予測モデルにどの臨床指標がより寄与するかを明らかにしました。
結果)
本研究では、退院時FIM合計点の予後予測において、体幹機能の標準偏回帰係数が0.221と最も高い寄与率を示しました。また、FIMの難易度が低いFIM小項目、SIAS、非障害側の握力も正の標準偏回帰係数を持ちました。そして本研究の予後予測モデルの決定係数は0.741でした。
結論)
本研究は、FIM小項目やその他の臨床指標を用いて脳卒中患者の予後予測モデルを学習し、寄与率を比較した初めての報告です。そして、体幹機能や難易度の低いFIM小項目が予測モデルに対する寄与率が高いことが示されました。
こちらの論文は、オープンアクセスとなっておりますので、どなたでも下記のリンクから詳細をお読みいただけます。