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業績

本教室 宮崎裕大助教 が執筆した機械学習を用いた脳卒中患者の予後予測が PLOS ONEに掲載!

■掲載雑誌 / Journal
PLOS ONE

■論文タイトル / Title
Improvement of predictive accuracies of functional outcomes after subacute stroke inpatient rehabilitation by machine learning models

■著者 / Authors
Miyazaki Y, Kawakami M*, Kondo K, Tsujikawa M, Honaga K, Suzuki K, Tsuji T(*責任著者)

■内容 / Contents
1000例を超える脳卒中患者の大規模データを用いて、従来から用いられる重回帰分析と近年注目されている機械学習により予後予測を行いました。その結果、機械学習が重回帰分析よりも予後予測精度を改善することが示唆されました。

Improvement of predictive accuracies of functional outcomes after subacute stroke inpatient rehabilitation by machine learning models.

Miyazaki Y, Kawakami M*, Kondo K, Tsujikawa M, Honaga K, Suzuki K, Tsuji T
PLOS ONE 18(5): e0286269. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0286269

背景) 脳卒中患者の退院時ADLを予測する場合、重回帰分析による予後予測が一般的です。しかし、ノイズが多く、また非線形データである臨床データを、線形データを仮定する重回帰分析で予測ると予測精度が低下する可能性がありました。そこで、本研究では非線形データの解析が可能な機械学習に注目し、重回帰分析よりも予後予測精度が改善するのか検討することを目的としました。

方法) 回復期病棟に入院し、除外基準に該当した患者を除いた1046名を対象としました。説明因子として、患者背景および入院時のFunctional Independence Measure (FIM)得点を用いました。また退院時のFIM合計点およびFIM利得を目的変数として、予測モデルを学習しました。予測モデルとして、従来法のステップワイズ法による重回帰分析(Stepwise Linear Regression: SLR)に加えて、機械学習アルゴリズムとして、回帰木(Regression Tree: RT)、アンサンブル学習(Ensemble Learning: EL)、ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network: ANN)、サポートベクター回帰(Support Vector Regression: SVR)、ガウス過程回帰(Gaussian Process Regression: GPR)を採用しました。予後予測精度は、リハビリテーション分野で報告が多い決定係数と、機械学習分野で報告が多いRoot Mean Square Errorで行いました。また、機械学習では学習に用いる症例数が少ないと過学習が生じ、未知のデータへの汎用性が低下することが知られています。そこで、学習に用いずに保存しておいたテストデータで予測精度を評価する方法を採用しています。なお、本研究では機械学習の予測精度を検討するため、麻痺などの指標を入れずに説明変数を少なくしています。

結果) 退院時FIM運動項目合計点を予測する際に、機械学習モデルの決定係数(RT=0.75、EL=0.78、ANN=0.81、SVR=0.80、GPR=0.81)は、SLRの決定係数(0.70)よりも優れていました。また,FIM利得の予後予測における機械学習の決定係数(RT = 0.48, EL = 0.51, ANN = 0.50, SVR = 0.51, GPR = 0.54)は、SLRの決定係数(0.22)よりも大幅に改善しました。

結論) 本研究は、機械学習、特にガウス過程回帰が重回帰分析よりも脳卒中患者の予後予測精度を改善する可能性を示唆しました。またFIM利得での予後予測精度も改善する可能性が示唆されています。

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