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SIAS 脳卒中機能障害評価法

SIAS(“さいあす”と読む)とは、Stroke Impairment Assessment Set(脳卒中機能障害評価法)の頭文字をとったもので、脳卒中の機能障害を定量化するための総合評価セットです。9種類の機能障害に分類される22項目からなり、各項目とも3あるいは5点満点で評価します。

SIASの特徴

  1. 多面的な脳卒中機能障害の評価項目として必要かつ最小限の項目を含む。
  2. 検者一人で簡単に短時間で評価できる。
  3. 各項目が単一のテストによって評価できる。
  4. 非麻痺側機能を含んだ総合評価セットである。  

脳卒中の機能障害は、運動麻痺にかぎらず、感覚障害、痙性、拘縮、体幹障害、高次機能障害など多岐にわたるが、従来の脳卒中の機能評価では、運動機能ばかりに重点がおかれておいることが多かった。これは、運動麻痺が脳卒中患者のADLに直接的に影響する障害であることを反映したものであろう。しかし機能障害の”多面性”を忘れては、脳卒中患者を評価したことにはならないし、脳卒中のリハビリテーションを本当に理解することはできない。

脳卒中機能評価法(SIAS)は、多面的な機能障害を見落としなく評価できるように作成されている。これまでのようにそれぞれの機能障害の評価法を資料から選んで組み合わせる必要がなく、あとで振り返ったとき、検者によって評価項目や評価法がまちまちであるという危険性がない。臨床面では患者の機能障害についての共通言語を持つということになるし、研究面からみれば、常に必要なデータがカルテに蓄積され続けるという意味で、実に強力な武器を得ることにつながるわけである。

SIASは機能障害の変化をとらえやすいように工夫されたテスト群から構成されており、脳卒中患者をみるとき、どの機能障害が改善したか、あるいは悪化したかという点が把握しやすい評価法といえる。

また、SIASは”簡便”であり、外来、ベッドサイドあるいは訓練室など、どこでも施行できるようなテストから構成されている。施行時間は10分弱であり、慣れてくると5分程度で可能となる。しかも、打腱器と握力計、そしてメジャー以外、特別な道具はまったく必要としない。したがって、忙しい臨床の合間でも、心がけひとつで繰り返し評価することが可能である。

SIASのもうひとつの特徴は、Brunnstrom Stageなどのような多項目評価(multi-task assessment)ではなく、単一項目評価(single-task assessment)を採用しているという点である。多項目評価の場合、たった1つの機能をいろいろな角度から眺めているにすぎず、得られた結果の中に、単一項目評価より多くの情報を含んでいるとは考えられない。それだけのものに時間をかけるよりはむしろ、感覚機能、関節可動域などの機能障害に目を向けた方が有益であるというのがSIASの立場である。

さらに、SIASのユニークな点は、非麻痺側機能評価を含むことである。脳卒中の”非麻痺側”は、健側とはいえないという事実や、ADLや歩行能力に非麻痺側機能が重要であるというこれまでの知見を生かして、評価の中に上下肢の非麻痺側機能項目が含まれている。

以上のような背景で現在のSIASが開発された。SIASを用いることにより、脳卒中の機能障害を正しく把握できるだけでなく、その分析を重ねることにより、機能障害の構造、疾患自体との関係、能力低下との関係など、さまざまな事実が明らかになっていくものと思われる。