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Japanese version of the Gait Assessment and Intervention Tool (G.A.I.T.)

G.A.I.T.(Gait Assessment and Intervention Tool)は、2009年にDalyらによって開発された、歩行の協調性(gait coordination)を客観的に評価する尺度です。とくに脳卒中後の歩行障害の質的な特徴を捉えることを目的としており、歩行中の下肢・体幹の運動パターンを詳細に分析できる点が特徴です。

G.A.I.T.の概要と特徴

G.A.I.T.は、空間的・時間的な歩行協調性に注目した、計31項目からなる評価尺度です。下肢関節の動き、体幹の動揺、左右差、異常な代償動作などを総合的に評価します。各項目は0(正常)~3(高度な異常)の4段階でスコア化され、総得点が低いほど正常に近い歩行パターンであるとされます。
評価は、側面(lateral)および前後面(anterior-posterior)から撮影した歩行ビデオを用いて行われ、1つ1つの項目について客観的な観察に基づいて実施されます。なお、正確な評価にはある程度の専門知識と訓練が必要であり、訓練を受けた理学療法士やリハビリテーション専門職による実施が推奨されます。
また、本ツールは三次元動作解析装置などの高額な機器を必要とせず、日常の臨床現場でも比較的簡便に活用できる点が大きな利点です。

日本語版の開発とその信頼性・妥当性

本研究では、国際的な翻訳・文化適応のガイドラインであるISPORに従って、原著者の許諾のもと、専門家によるレビューと前向き調査を経て、G.A.I.T. の日本語版(Japanese version of the G.A.I.T.)を作成しました。
日本語版G.A.I.T.の信頼性・妥当性の調査には、脳卒中患者63名を対象に検証されました。その結果、以下のような高い指標が得られました:

  • 評価者間信頼性(Inter-rater reliability):ICC = 0.975
  • 再検査信頼性(Test-retest reliability):ICC = 0.988
  • 妥当性指標(他評価との相関):

Fugl-Meyer Assessment–Lower Extremity(r = -0.774)
Functional Ambulation Category(r = -0.720)
FIM運動項目スコア(r = -0.647)
歩行速度(r = -0.839)

これらの結果は、G.A.I.T.が日本語環境でも高い信頼性と妥当性を備えた有用な評価ツールであることを示しています。

臨床への活用と今後の展望

G.A.I.T.は、「歩行の協調性」という視点から異常動作を捉えることができる評価指標であり、リハビリテーションの評価・介入計画・経過観察において有用です。特に、脳卒中患者においては、リハビリテーション介入前後の歩行の質的変化を客観的に捉えることが可能です。
今後は、日本語版G.A.I.T.の普及により、国内での臨床活用だけでなく研究的検証の発展が期待されます。さらに、他の神経疾患や高齢者を対象とした応用研究の発展も期待されます。

ご利用にあたって

G.A.I.T.は、10分程度で実施可能であり、特別な機器を必要としない簡便な評価ツールです。ただし、正確な判定には事前にトレーニングを受けた専門職による使用が推奨されます。
本ページでは、日本語版G.A.I.T.の評価用紙および使用方法を公開し、診療・臨床研究の両面でのご活用を広く推奨しております。