痙縮に対する専門的なボツリヌス注射
手足のつっぱり(痙縮)
脳卒中をされた患者さんや脳性麻痺の患者さんによくみられる症状の一つに手足のつっぱりという症状があります。手足のつっぱりとはある特定のいくつかの筋肉が緊張しすぎて、動かしにくくなったり、ご自分の意図しない方向に動いてしまう状態のことです。
手足のつっぱりは、手指が握ったままとなり開こうとしても開きにくい、肘が曲がってしまう、足首が下や内側の方に曲がってしまう、足の指が曲がってしまうなどの症状がみられます。
手足のつっぱりが強い状態が長く続くと、筋肉が固まって関節そのものが固くなってしまい、日常生活に支障が生じてしまいます。また、手足のつっぱりがあると、リハビリテーションをやりにくいことが多く、手足の動きをよくするためにもその治療が重要となります。
ボツリヌス注射の効果
ボツリヌス注射は、筋肉を柔らかくする(弛緩させる)作用があるボツリヌス毒素を筋肉内に注射する治療法です。毒素と聞くと怖い感じもしますが、安全性は十分に証明されており、長らく使われている注射薬です。本邦の脳卒中治療ガイドラインでも、痙縮に対する治療として、ボツリヌス注射が推奨されています。
当院でのボツリヌス注射に関する取り組み ~日本有数の専門的注射外来~
ボツリヌス注射の効果を担保するために最も重要なことは、「つっぱっている筋肉を正しく見つけて、そこの筋肉に注射をする」ということです。手足のつっぱりは、この筋肉はつっぱっていなくても、その隣の筋肉はつっぱりが強い、ということはよくあります。どの筋肉に注射を打つべきかどうかの判断には、熟練を要しますが、当科はボツリヌス注射が日本で始まってからずっとこの治療を行っており、注射をするすべての医師が十分なトレーニングを受けています。
また、狙った筋肉に注射をするために、当院では電気刺激を使い、筋肉を同定しています。ボツリヌス注射の際に、電気刺激やエコーを用いることは、ボツリヌス注射の効果を高めることは世界的にも一般的です。また、当科は日本臨床神経生理学会認定の筋電図専門医が多く在籍しており、狙った筋肉に注射をするためのプロフェッショナルな集団と言えます。
当院でボツリヌス注射をご希望される方は、「ボツリヌス注射希望」という情報提供書をかかりつけの先生に書いていただき、リハビリテーション科の初診外来の予約を取ってください。リハビリテーション専門の医師が診察にて詳細な評価をさせていただいた上で注射の適応を判断します。注射薬の取り寄せが必要になるので、実際の注射はその次の外来日になります。