①FIM version 3.0関連文献を引用する必要性
論文等で発表する場合には、FIM version 3.0(Japanese version)=FIM第3版日本語版を使ったことを明記し、文献を引用する必要があります。先述のようにFIM第3版日本語版は、我が国の社会文化的背景を考慮し、慶應義塾リハビリテーション医学教室・慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターで収集された独自のデータも用いながら特異的な解釈を加えて邦訳された、信頼性と妥当性の確立した評価尺度です。
他方で、米国UDSMRではよりversionの進んだ”FIM”を作成しており、それらを利用するためには先方から有償での認証を受ける必要があります。両者は、基本的な採点方法は同じです。
FIMの最新版は、国際比較の上ではより適している場合があり得、また国際共同研究では認証を得た上での最新版の使用が必要になる場合もあるかと考えられます。しかし、国内で普及しているものとバージョンが異なり、且つ本邦独自の文化的背景の解釈から離れるため国内他施設との比較に適さなくなります。
従って、国内では特殊な場合を除いて、十分な妥当性と信頼性、本邦の文化の解釈を含む FIM第3版日本語版 を用いるほうが適切であると考えられます。
②論文作成時の注意(詳細)
(1)FIMはUniform Data System for Medical Rehabilitationが開発した尺度であり名称ですので、全てのFIMのうしろには(TM)を付記します。
(2)前項でふれたように、FIM第3版日本語版の無償利用が許されている一方で、それより先のversionは米国UDSMRが版権を主張し有償で管轄しています。従って、論文ではMaterial and Methodにしっかりと出典を明記し引用する必要があります。
<引用例>
We used the Japanese version of FIM(TM) version 3.0 (文献1,2) that has culturally relevant modifications for some of the items (文献3,4).
<FIM参考文献>
1.Data management service of the Uniform Data System for Medical Rehabilitation and the Center for Functional Assessment Research; Guide for use of the uniform data set for medical rehabilitation, State University of New York at Buffalo, version 3.0, March 1990
(説明) 邦訳のもととなったversion 3.0です。
2.Liu M, Sonoda S, Domen K. Stroke Impairment Assessment Set (SIAS) and Functional Independence Measure (FIM) and their practical use. In: Chino N, ed. Functional Assessment of Stroke Patients: Practical Aspects of SIAS and FIM. Tokyo: SplingerVerlag; 1997. p.17–139. (in Japanese)
(説明) Uniform Data Sysntem 事務局・ニューヨーク州立大Buffaro校Carl V. Granger教授から慶應リハ医学初代教授千野へ依頼があり出版に至った公式な訳書です。絶版になっておりますが引用文献には入れる必要があります。
3.Tsuji T, Sonoda S, Domen K, Saitoh E, Liu M, Chino N. ADL structure for stroke patients in Japan based on the functional independence measure. Am J Phys Med Rehabil 1995; 74: 432 /438.
(説明) 邦訳のもととなったversion 3.0の英文論文としての泉源といえる論文で、引用が必要です。
4.Yamada S, Liu M, Hase K, Tanaka N, Fujiwara T, Tsuji T, Ushiba J. Development of a short version of the motor FIM for use in long-term care settings. J Rehabil Med. 2006 Jan;38(1):50-6. doi: 10.1080/16501970510044034.
(説明) ”The Japanese version of the FIM(TM) has culturally relevant modifications for some of the items. “と明確に記載していますので、上記の文例を使用されるのでしたら引用してください。
③FIMの営利目的利用への警告
①で述べたような背景から、データ提供に協力してくださった患者さんのお志に報いるためにも、本邦での FIM第3版日本語版 の利用は、営利目的の利用を除き、臨床・研究・教育目的に限り対価を頂かない形を貫かせていただいております。しかしながら営利目的で利用された場合はそのような大義を失いますので、版権元等からなんらかのアクションがある可能性が否定できません。