リハビリテーション医学は、生活や動作の側面から、運動や認知、嚥下をはじめとする機能障害の診断・評価・治療を専門とする学問分野です。
当教室では、神経生理学や運動生理学、脳科学を治療に応用する ニューロリハビリテーション、がん患者のADLやQOLを調え高めるがんリハビリテーション 、再生医学や分子生物学にまつわる再生リハビリテーション、これまで見過ごされていた障害の側面を詳らかにする新しい評価法の開発、最先端の技術とリハの融合を目指すリハビリテーション 工学・ロボットリハビリテーション 、心疾患患者を対象とした緻密な心臓のリハビリテーション、地域医療や災害支援に関する地域リハビリテーション や災害リハビリテーション 、各種疾患・障害に対する専門的リハビリテーション 、リハビリビリテーション 心理学など幅広いテーマに取り組んでいます。
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*定期的にチェックしておりますが、当教室に関係ない論文が検索されてくるようでしたらご一報くださいますようお願い申し上げます。
以下、主な研究成果です。タイトルをクリックするとアコーディオンが開き、邦語で概要を閲覧になれます。
<最近の論文>
関連病院の急性期病院でデータ取得したCOVID19のリハビリテーションに関する多施設研究で、未知の新たな感染症に対し、リハビリテーションがどのように行われていたかを示す貴重な研究となりました。
当教室では、整形外科学教室・生理学II教室との共同研究の中で再生リハビリテーションについて研究を進めています。再生リハビリテーションは再生医療に併用されるリハビリテーション手法のことで、移植された幹細胞の生着や神経分化、宿主神経回路への統合などに欠かすことのできない治療手段です。脊髄損傷に対する再生医療とリハビリテーションの併用について、基礎と臨床の両面から総覧し、明らかになっている機序や課題、展望について論じました。この分野の総説は非常に少なく、本邦からはおそらく初めてのものです。以下からopen accessでご覧頂けます。https://rdcu.be/cB1Ee
肺高血圧症の中でCTEPHは治療方法の確立に伴い、リハビリの重要性が認識され始めているが、この疾患のADL,IADLの特性についてはまだ知られておらず、それを明らかにした報告。オープンアクセスなので、無料でダウンロードできます。肺高血圧症を臨床で診る先生方はぜひご覧くださいませ。
これまで脊髄損傷モデル動物の四足歩行訓練には統一されたプロトコルはなく、適切な訓練強度や訓練時間は不明でした。過負荷の原理に沿ったプロトコルを作成し、慢性期脊損マウスの歩行訓練を行ったところ、走行距離との間に相関を持った機能回復を認めました。適切な訓練時間、必要な馴化期間等についても合わせて検討しました。さらに神経栄養因子発現増加などの分子的変化も合わせて報告しました。こちらは先日の運動療法学会にて最優秀演題賞を受賞した内容になります。
慢性期脳卒中患者に対して行ったIVESを用いた上肢リハ(HANDS療法)の良好な改善を予測する因子として、介入前の運動機能だけでなく感覚障害の程度が抽出された。都築先生の学位論文で、感覚障害が運動機能改善に関係するのか?という普遍的なquestionに一つの答えを提示した論文です。
脊髄損傷患者の日常生活自立度(ADL)を評価するために、脊髄障害自立度評価法(SCIM-III)が広く利用されています。SCIM-IIIは3領域(セルフケア、呼吸・排泄、移動)にわたる19項目、100点満点で、入院患者を医療従事者が観察することで評価する方法です。SCIM-IIIはイスラエルで開発され、日本語版は国立病院機構村山医療センターと当教室で作成し、その信頼性と妥当性を学術誌で報告しました。一般的に用いられるFIMよりも脊髄損傷特異的な領域(呼吸や排尿など)について、より詳細に評価することが出来るため、脊髄損傷患者のADL評価法として世界標準となっています。
一方でSCIM-IIIは観察により評価する性質上、外来患者のADL評価には向きません。事実、多くの患者が長期にわたって過ごすはずの退院後のADL評価報告は少なく、日常診療でも定量的な評価は行われてきませんでした。そこで、これらの問題を解決すべく自己採点方式の評価法であるSpinal Cord Independence Measure – self report (SCIM-SR)がスイスで開発されました。SCIM-IIIと同様の19項目、100点満点の評価法です。
今回、我々はSCIM-SRを日本語に翻訳し、SCIM-IIIとの妥当性を検証し学術誌に報告しました。脊髄の再生医療が現実となりつつある現在、外来の脊髄損傷患者のADL評価は欠かせないものになると予想されます。そのためには入院時のADL評価と相同な評価法が必須となるため、SCIM-SRはその中心的役割を担うことが期待されます。
一方でSCIM-IIIは観察により評価する性質上、外来患者のADL評価には向きません。事実、多くの患者が長期にわたって過ごすはずの退院後のADL評価報告は少なく、日常診療でも定量的な評価は行われてきませんでした。そこで、これらの問題を解決すべく自己採点方式の評価法であるSpinal Cord Independence Measure – self report (SCIM-SR)がスイスで開発されました。SCIM-IIIと同様の19項目、100点満点の評価法です。
今回、我々はSCIM-SRを日本語に翻訳し、SCIM-IIIとの妥当性を検証し学術誌に報告しました。脊髄の再生医療が現実となりつつある現在、外来の脊髄損傷患者のADL評価は欠かせないものになると予想されます。そのためには入院時のADL評価と相同な評価法が必須となるため、SCIM-SRはその中心的役割を担うことが期待されます。
下肢に新たに定義した距離が,健常対照者と比較して片麻痺歩行の特徴を捉えられるかどうかを調べることを目的とした.慢性脳卒中患者42名と、年齢をマッチさせた対照者10名を対象に、三次元歩行解析を行った。骨盤-つま先間距離(PTD)は、歩行中の前上腸骨棘マーカーと足指マーカー間の絶対距離を両脚支持期のPTDで正規化して算出した。また,遊脚期の短縮ピークをPTDminとして定量化した。脳卒中群のPTDminは、対照群と比較して、患側では短縮が少なく、非患側では過剰に短縮していた。脳卒中患者のPTDminは、歩行速度および観察的歩行スケールと中程度から高い相関を示した。PTDminは、前額部の代償パターンによる見かけ上の改善に影響されることなく、歩行の質を適切に反映していた。
2016-2018にかけて慶應病院でHALを用いた慢性期脊損の臨床研究を行っており、このたびChinese Association of Rehabilitation Medicine 主催のNeural Regeneration Medicine誌 IF5.135 よりpublishされました。慢性期であってもRobot-assisted Gait trainingを行うことで体幹筋力が増加することを明らかにしました。筆頭の大川原洋樹先生は整形外科所属の理学療法士として活躍されている方です。
脳幹部腫瘍術後血圧調節障害が遷延し、リハに難渋した症例に対する詳細なアプローチをわかりやすいシェーマとともにまとめ、今回accept, publishに至りました。脳神経外科領域におけるリハビリテーションの報告は当科領域の啓発という観点からも意義深いと考えております。
ホスピス財団が継続的に実施している「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究(J-HOPE)」の一環として、ホスピス・緩和ケア病棟におけるリハビリテーション治療の必要性を検討しました。
全国のがん診療連携拠点病院対象にしたアンケート調査です。入院中のがん患者に対するリハビリテーション治療の実施状況を分析し、入院中にはほぼ全施設でリハビリテーション治療が実施されていたものの不十分と感じる施設は多く、その理由としてマンパワー、知識・技術の習得が要因としてあげられたというものです。
下肢続発性リンパ浮腫患者を対象に、多層包帯法による圧迫下での運動(エルゴ)の即時的な浮腫改善効果の姿勢による違いを明らかにしたRCTです。臥位での運動のほうが座位での運動よりも効果が高いことがわかりました。
高齢重度の大動脈弁狭窄症患者において、TAVI治療後6か月でIADLや栄養状態が改善していました。
大動脈弁狭窄症患者において、TAVIと外科的弁置換術で術後の嚥下障害の発生率を比較した、外科的手術は一過性の嚥下障害を呈する割合が多いが、長期的には嚥下障害が残存するリスクはどちらの介入でも低かったことを報告しました。
パーキンソン病患者さんの歩行障害は日常活動を低下させますが、リズム刺激で改善することがわかっていますが、そのメカニズムはわかっていません。そこで機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、歩行時の脳内メカニズム解明に挑みました。結果、パーキンソン病患者は歩行イメージ時に左弁蓋部が過活動になり、音リズム刺激でその過活動が抑制されることを示しました。この結果から弁蓋部は感覚と運動をつなぐ部位と考えられており、その機能不全があるパーキンソン病患者で歩行時に負荷がかかっており、それを音リズム刺激が負荷を緩和し、機能を補うのではないかと考えられます。
過去に行った半側空間無視に対するプリズム適応療法のRCTの2次解析で、プリズム適応群はADL上の半側空間無視症状の評価であるCBSの項目の中で、視線、所有物の探索、の2項目に特に改善が見られました。また、自身の無視症状に対する認識を示す病態失認スコアの絶対値が、プリズム群ではコントロール群より治療後早期に改善が認められ、最終的にも有意に改善していたということが示されました。元になったRCTの論文ではプリズム適応療法後にリハビリテーション治療を継続することによってFIM gainが有意に改善することが示されましたが、今回の解析で無視に対する自己認識が先行して改善することにより、リハビリテーション治療の効果を高める可能性が示唆されました。
慢性期脳卒中患者において、麻痺手の使用頻度を規定する因子の検討です。運動機能に加えて、感覚機能(触覚)が麻痺手の使用頻度に関連していました。
脳卒中患者における感覚評価は意外と信頼性、妥当性が証明された手法が少なく、今回は、表在覚の評価としてSWMT, 深部覚の評価として母指探し試験の信頼性と妥当性を報告しました。これらの評価をスクリーニングとして使用することの裏付けです。
足関節の背屈イメージ、底屈イメージが相反性抑制に与える影響を検証した論文です。非練習下においては底屈イメージが相反性抑制を修飾したのに対し、背屈イメージは有意な変化を認めませんでした。が、背屈の運動イメージを練習した後では相反性抑制を修飾しました。足関節において背屈運動イメージは難易度が高い可能性と、練習によってそれが強化できる可能性が示唆されています。
食道癌のサルコペニアを研究されていた一般消化器外科の先生とのコラボで、周術期のリハ評価や訓練など嚥下関係の部分をこちらで執筆したものです。
【要旨】ハンセン病患者の足底知覚と歩行時足底圧分布の関係をうまく示した研究はありませんでしたが、臨床グレードごとに分けた場合に、中等度症例(グレードII:足部の変形は無いが、足底潰瘍があるかそれに繋がりうる創や胼胝形成を繰り返している症例)では知覚が保たれている部位に荷重する傾向があることを文献まとめとともに報告しました。障害像を基本的ですが重症度で分けるという姿勢を初めて導入した点と、ハンセン病研究を整理した学術的価値が認められました。
【要旨】FDA-2(構音障害の評価ツール)日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検討し、それを用いてデュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける構音障害を評価したという内容でございます。
【要旨】婦人科がん術後の排尿障害のパターンと出現頻度のアンケート調査
【要旨】湾岸リハのデータベースを利用した研究です。半側空間無視がリハビリテーションアウトカムに影響することはよく知られていますが、左半球損傷による右半側空間無視については、見過ごされていることが多いのが現状です。この論文では、右無視は左無視よりやや少ないですが、左半球損傷の30%程度で発生し、左無視と同じくADLのアウトカムを増悪させることを示しました。