最近の慶應義塾大学リハビリテーション医学教室・教室員の受賞は以下になります。
令和4年11月24、25、26日に国立京都国際会館で開催された第52回日本臨床神経生理学会学術大会において、リハビリテーション医学教室の山田祐歌助教が優秀演題賞を受賞した。神経内科、脳神経外科、精神科、リハビリテーション科等が参加する学際的な同学会において発表演題5題に与えられる賞で、全329演題から選ばれた。受賞演題は「慢性期脳卒中片麻痺患者における電気刺激と健側上肢の使用制限の併用療法の効果 〜忍容性試験〜」である。本研究では、運動機能回復と同時に麻痺手の使用習慣化を促すための取り組みを実施し、高い忍容性と麻痺機能の改善効果を明らかにした。麻痺手の実用手獲得には、特に慢性期患者では困難とされている麻痺機能回復に加え、今まで使用してこなかった麻痺手を使用するという「行動変容」へのアプローチが重要であり、本報告ではその両者に着目した取り組み結果が評価された。
慢性期脳卒中片麻痺患者における電気刺激と健側上肢の使用制限の併用療法の効果 〜忍容性試験〜
山田祐歌、川上途行、紙本貴之、辻哲也
本教室の川上途行准教授が日本臨床神経生理学会第12回奨励賞し、2022年11月24日から26日に開催された第52回日本臨床神経生理学会学術集会(京都)で受賞講演を行った。これは公募申請時に45歳以下で、臨床神経生理学分野で顕著な業績があり、将来のさらなる発展が期待される会員に送られる賞である
川上医師はこれまで脳科学、神経生理学に基づくニューロリハビリテーション手法の開発に従事し、経頭蓋磁気刺激によるMEP, SICIの評価、H波を用いた相反性抑制評価、SEPといった神経生理手法を用い、主に脳卒中患者を対象に病後の運動麻痺や痙縮、感覚障害の基礎的メカニズム、改善のメカニズムを研究してきた(Ther Adv Chronic Dis. 2019、Clin Neurophysiol. 2022、ほか)。研究結果を踏まえた上で、これまで治療が困難とされてきた脳卒中慢性期まで残存した重度運動麻痺に対し、脳波技術、運動イメージ、電気刺激、ロボティクスなどを用いた多くの新たな治療介入の効果を検証してきた(Ther Adv Neurol Disord. 2018、Disabil Rehabil. 2021、ほか)。これらが評価され今回の受賞となった。
当教室からは藤原俊之先生(当時慶應義塾大学講師、現順天堂大学教授)以来、二人目の受賞となった。
川上医師はこれまで脳科学、神経生理学に基づくニューロリハビリテーション手法の開発に従事し、経頭蓋磁気刺激によるMEP, SICIの評価、H波を用いた相反性抑制評価、SEPといった神経生理手法を用い、主に脳卒中患者を対象に病後の運動麻痺や痙縮、感覚障害の基礎的メカニズム、改善のメカニズムを研究してきた(Ther Adv Chronic Dis. 2019、Clin Neurophysiol. 2022、ほか)。研究結果を踏まえた上で、これまで治療が困難とされてきた脳卒中慢性期まで残存した重度運動麻痺に対し、脳波技術、運動イメージ、電気刺激、ロボティクスなどを用いた多くの新たな治療介入の効果を検証してきた(Ther Adv Neurol Disord. 2018、Disabil Rehabil. 2021、ほか)。これらが評価され今回の受賞となった。
当教室からは藤原俊之先生(当時慶應義塾大学講師、現順天堂大学教授)以来、二人目の受賞となった。
田代祥一非常勤講師(杏林講師)が、研究論文”Probing EEG activity in the targeted cortex after focal transcranial electrical stimulation” Tashiro S, et al., Brain stimulation. 2020.13(3):815-818にて第10回杏林医学会研究奨励賞を見事受賞しました。
非侵襲的に脳機能を修飾できる経頭蓋電流刺激法は,簡便かつ安全にリハビリテーションの効果を増強させられる併用療法として大きな期待を集めています.時間分解能に優れる脳波で計測されるBrain stateは効果指標として重要ですが,電流刺激電極と脳波記録電極は別物であるため,刺激電極で覆われた部位,すなわち標的領野由来の脳波を記録する手段が乏しく,直接的な神経生理作用の検証が困難でした.田代君は刺激電極の中央に脳波電極を埋め込むという簡潔明快な手法を発明し,このハイブリッド電極により十分に脳波測定が可能であることを検証,報告しました.本手法は,従来必須と考えられてきた脳磁図や機能的核磁気共鳴の併用といった大掛かりな設備が不要で,多くの研究室で簡便に実施可能であるため,臨床神経生理学や神経リハビリテーション領域の研究・臨床を大いに振興する画期的な業績であると言える点が評価されました.
非侵襲的に脳機能を修飾できる経頭蓋電流刺激法は,簡便かつ安全にリハビリテーションの効果を増強させられる併用療法として大きな期待を集めています.時間分解能に優れる脳波で計測されるBrain stateは効果指標として重要ですが,電流刺激電極と脳波記録電極は別物であるため,刺激電極で覆われた部位,すなわち標的領野由来の脳波を記録する手段が乏しく,直接的な神経生理作用の検証が困難でした.田代君は刺激電極の中央に脳波電極を埋め込むという簡潔明快な手法を発明し,このハイブリッド電極により十分に脳波測定が可能であることを検証,報告しました.本手法は,従来必須と考えられてきた脳磁図や機能的核磁気共鳴の併用といった大掛かりな設備が不要で,多くの研究室で簡便に実施可能であるため,臨床神経生理学や神経リハビリテーション領域の研究・臨床を大いに振興する画期的な業績であると言える点が評価されました.
第46回運動療法学会におきまして、5S7脊髄再生研究室にて田代祥一非常勤講師が主に指導した、整形外科大学院D3の柴田 峻宏先生の報告が、最優秀演題に選出されましたのでご報告致します。
慢性期脊髄損傷モデルマウスに対する漸増負荷法トレッドミル訓練の有効性の検討
柴田 峻宏1,2),田代 祥一3, 4),名越 慈人1) ,岡野 栄之2),中村 雅也1)
これまで脊髄損傷モデル動物の四足歩行訓練には統一されたプロトコルはなく、適切な訓練強度や訓練時間は不明でした。今回、過負荷の原理に沿ったプロトコルを作成し、慢性期脊損マウスの歩行訓練を行い、走行距離との間に相関を持った機能回復が観察されました。また走行スピード等にも着目し、適切な訓練時間、必要な馴化期間等についても検討しました。基礎研究領域の運動療法の発展に寄与する研究であることが評価され、最優秀演題に選出されました。
所属
1) 慶應義塾大学医学部整形外科学教室
2) 慶應義塾大学医学部生理学教室
3) 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
4) 杏林大学医学部リハビリテーション医学教室
第45回日本脳卒中学会学術集会にて学会賞優秀口演賞 臨床研究部門受賞
令和2年8月24、25日にWeb開催されたStroke 2020において、田代祥一非常勤講師が学会賞優秀口演賞 臨床研究部門を受賞した。脳神経外科、神経内科、脳卒中科、リハ科等が参加する学際的な同学会において臨床1題、基礎1題に与えられる賞で、誰もが経験の乏しい事前録画方式の発表のなか全2383演題の頂点に輝いた。受賞演題は「慢性期脳卒中患者におけるClosed-loop神経筋電気刺激を利用したニューロリハによる体性感覚皮質可塑性の誘導」である。本研究では、運動機能回復を目的としたニューロリハが感覚皮質可塑性を伴って深部覚回復を促すことを電気生理学的に初めて明らかにした。慢性期脳卒中では運動機能回復は得られづらく、感覚機能に着目した治療応用も視野に入る業績となる。ただ最も特筆すべきは介入・評価ともに多くの施設で実施可能な手法を用いている点にこそあると言える。閉ループ系の末梢電気刺激を応用した先進的ニューロリハを用いてはいるが、市販機材もあり比較的普及している。評価に用いた体性感覚誘発電位も、中規模以上の病院であれば十分実施可能だ。近年ニューロリハは介入評価共に複雑化・大掛かり化が顕著であり、脳磁図や機能的MRI、反復磁気刺激等の設備が必須であるかのような先入観が蔓延し、一般医療機関での研究意欲を縮退させている。「普通の手法」による卓越した報告は、広く研究意欲を刺激し、脳卒中研究の裾野を拡大させる点で高く評価されたと言えよう。
令和2年8月24、25日にWeb開催されたStroke 2020において、田代祥一非常勤講師が学会賞優秀口演賞 臨床研究部門を受賞した。脳神経外科、神経内科、脳卒中科、リハ科等が参加する学際的な同学会において臨床1題、基礎1題に与えられる賞で、誰もが経験の乏しい事前録画方式の発表のなか全2383演題の頂点に輝いた。受賞演題は「慢性期脳卒中患者におけるClosed-loop神経筋電気刺激を利用したニューロリハによる体性感覚皮質可塑性の誘導」である。本研究では、運動機能回復を目的としたニューロリハが感覚皮質可塑性を伴って深部覚回復を促すことを電気生理学的に初めて明らかにした。慢性期脳卒中では運動機能回復は得られづらく、感覚機能に着目した治療応用も視野に入る業績となる。ただ最も特筆すべきは介入・評価ともに多くの施設で実施可能な手法を用いている点にこそあると言える。閉ループ系の末梢電気刺激を応用した先進的ニューロリハを用いてはいるが、市販機材もあり比較的普及している。評価に用いた体性感覚誘発電位も、中規模以上の病院であれば十分実施可能だ。近年ニューロリハは介入評価共に複雑化・大掛かり化が顕著であり、脳磁図や機能的MRI、反復磁気刺激等の設備が必須であるかのような先入観が蔓延し、一般医療機関での研究意欲を縮退させている。「普通の手法」による卓越した報告は、広く研究意欲を刺激し、脳卒中研究の裾野を拡大させる点で高く評価されたと言えよう。